研究概要 |
近年、外場により物質の状態を制御し、デバイス特性に生かす試みが盛んに行われている。スピンクロスオーバー(SC)化合物は、そのような可能性からも注目されている物質系である。SC現象は、温度、圧力、光などの外場(環境)により、系が磁性(High Spin, HS)状態と非磁性(Low Spin, LS)状態の間で遷移する現象である。この転移現象は、中心磁性金属イオンの電子状態の変化ばかりでなく、分子振動や構造の変化を伴う協力的相転移であることが明らかにされている。従って、協力現象のモデル化は現象の機構を捉える上で重要になる。2009年度は、弾性相互作用モデルを用いてSC系の温度変化によるヒステリシスループのダイナミクスについて研究した。特に境界条件がドメイン生成に及ぼす影響について詳しく調べた。周期境界では、ドメイン形成は見られず(一様な核形成過程)、バルクではドメイン形成を抑制する効果があるのに対し、自由境界では、角からドメイン形成が起こることを見出した。この弾性相互作用で現われる実効的な長距離力の性質が表面効果と合わさって生じた特異な現象と考える事ができる。
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