研究概要 |
鉄3d電子の秩序化で強誘電体となるRFe_2O_4(R=Y, Ho-Lu)につき、高エネルギー放射光を用いた局所構造解析を行った。電荷秩序による格子歪みは存在することが分かったが、イオン位置の対称性の破れについては観測されず、この系では電子の実空間秩序が誘電性の起源と考えられる。また、RFe_2O_4における電子起源の新規強誘電性の発見に関して、解説記事で報告した。 RFe_2O_4について、いくつかの発展研究を報告した。まず、この系の鉄サイトMn置換物質YbFe_<2-x>Fe_xO_4の磁性と誘電性を調べた。Mn置換により磁性と誘電性が抑えられることを観測し、これを鉄サイトイオンの3d電子移動と関連して説明した。また、Co置換物質LuFeCoO_4の結晶構造を電子線回折により調べた。鉄とコバルトが短距離のイオン秩序構造を持っており、それにより発生する電気双極子が誘電性の起源であることを提案した。さらに、RFe_2O_4の一つLuFe_2O_4の良質単結晶を育成し、室温近傍で大きな電気磁気効果(数十%以上)を観測した。これは基礎応用両面から興味深い結果であり、現在詳細な研究を進めている。さらなる発展研究として、RFe_2O_4と同様の三角格子構造を有する新規物質Lu(Fe,Ti)O_3を合成し、電子線回折などの手法によりその性質を報告した。 電子の秩序化に由来する誘電性は、ペロブスカイトマンガン酸化物R_<0.5>Ca_<0.5>MnO_3(R:希士類)においても示唆された。誘電率測定・放射光測定などの結果により、イオン変位でなくマンガン3d電子が重要な役割を果たしていることを議論した。さらに、誘電率測定が系の不均一性に関する情報を与えることも指摘し、相分離マンガン系などへの応用が考えられると提言した。
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