最近我々は、集光レーザーの光圧をグリシン過飽和溶液に作用させることにより分子の高濃度領域を誘起し、結晶化へと導くことに成功した。この結果を踏まえ、本研究では自然蒸発により析出した結晶の近傍にレーザーを集光し、分子の高濃度領域を誘起することにより、光圧で結晶成長を制御することを目的として研究を行った。以下に主な結果を列記する。 1、サンプルを顕微鏡のステージにセットした約20分後には、自然蒸発による結晶析出が確認された。その後、時間と共に結晶は増大し、数分後には結晶成長が停止した。その後、レーザー光を結晶の近傍にレーザーを集光すると、集光点方向への再び成長が始まり、照射15秒後には結晶成長が集光点に到達し成長が停止し、引き続きレーザーを照射し続けても結晶に変化は見られなかった。このように、結晶成長方向を集光位置により制御し、求められる位置にまで成長させることに成功した。 2、別の例として、集光点付近に数個の結晶が存在した場合には、集光点に近く且つ集光点の向きに結晶成長面が向いていると思われる結晶が、上述と同様に成長が観察された。しかんしながら、その他の結晶は逆に溶解する様子が観測された。この現象は、オストワルド熟成を促進した結果であると考えられ、即ち光圧により系の平衡を傾けたことを意味する。この結果から、狙った結晶を成長または溶解させられることを意味し、例えば多結晶化してしまった結晶を、単結晶化させる事が可能であることを強く示唆している。21年度は、結晶成長速度のレーザー強度、偏光依存性について調べる。
|