研究課題
生物機能に基づく免疫化学測定法(ELISA法)を利用する残留農薬センサーの開発を行なった。まず標的農薬(殺虫剤)の特徴に着目し、独自の触媒的リンカー導入方法を開発した。具体的にはPdやRuを活性中心金属としてビス(オキサゾリニル)フェニル系有機配位子と直接結合させる新規触媒系を創案し、ヘック-溝呂木反応型アクリル系カルボン酸導入反応やジアゾエステルの触媒的NH挿入反応などに対応するハプテン群の合成ができた。触媒効率はTON=100万に達する。得られたハプテン群を巨大タンパクと結合させマウス免疫に提供し抗体作成を行なった。その結果、標的農薬特異的抗体がモノクロナール抗体として単離精製された。この標的農薬特異的抗体を固相坦持させ96穴プレートにセットアップすることでELISA法としての製品化に成功した。(堀場製作所)標的農薬センサーとしての感度はppbの水準に達し、極めて高感度、高選択性な農薬センサーとして完成した。これは対応標的残留農薬センサーとして初めての製品である。現在、2種類の標的農薬(殺虫剤)に対する抗体作製に成功している。商品化は現在1種類でエマメクチン測定キットとして製造販売されている。この研究成果は、低分子化合物の分析において主体となっている機器分析が、高額の機器、特定の設置場所、熟練技術等が必要で、しかも前処理に時間がかかる等の欠点を補完し、極微量の環境負荷化学物質を迅速・簡便かつ安価に測定できる新しい技術開発を提示できた。今後も今回開発した生物機能に基づく免疫化学測定法による残留農薬センサーは有機溶剤などによる二次汚染のリスクが少なく有用な測定法として環境及び食品の安全性を確保する社会的要求に対して極めて重要な成果であると思われる。
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