研究概要 |
本研究は残留農薬の免疫的化学測定法(イムノアッセイ)の確立を目的として、農薬のハプテン群を触媒的手法を用いて合成し、残留農薬分子センサーとしての標的農薬特異的な抗体を作成し、イムノアッセイに応用することである。残留農薬測定は、700種以上の農薬について機器分析法に依存し、その迅速・分析法が存在しない。したがって生物機能を利用したイムノアッセイは、ELISA法による迅速で簡便・廉価な点に於いて、標的物質の定性・定量などに威力を発揮するものと考えられる。しかしイムノアッセイには標的化合物に対して特異的な抗体を用いるが、農薬を含む環境負荷物質の多くは低分子化合物であるため、それ自体を直接免疫しても抗体は得られない。そこで触媒的手法(触媒的炭素-炭素結合形成反応)で側鎖を導入した誘導体(ハプテン)を合成し、キャリヤー蛋白質と結合させて免疫源とし、蛋白質の一部として認識させることにより、標的化合物を特異的に認識する抗体が得られる。農薬はその多くが活性水素やハロゲンを含んでいることに特徴がある。これらの官能基的農薬の特徴に着目し、独自に開発した触媒的リンカー導入方法を応用してハプテン群の合成が可能である.当該年度は本研究の最終段階で(1)エマメクチンの標識抗体作製、エマメクチンハプテンの合成とキット化,市販化(2)アゾキシストロビン殺菌剤の残留検査薬の開発、堀場製作所(株)による市販化、等が達成された。成果は国内外学会発表、論文発表、特許申請等を行った。
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