今年度、樹脂への固定化や光感応基を導入するための"鍵配位子"となるピリジン環の第4位に水酸基を導入した環状配位子L3の合成法を改善し確立した。すなわち、ケリダム酸を出発物質として4工程を経てジアルデヒドAを合成し、これとトリアミンBを銅イオン存在下でテンプレート反応させて、環状配位子L1を合成した。さらに、L1の窒素原子をトリフルオロアセチル基(TFA)で保護して得られるL2から、水酸基の脱保護を行い、目的の環状配位子L3を得ることができた。これらの結果は、論文として発表するよう今年度準備する。 引き続き、環状配位子L3を、側鎖として反応性の官能基である塩化ベンジル基をもつ樹脂(RX)と反応させ、樹脂上に固定化を研究した。固定効率をさらに向上する必要がある事や触媒として機能させるためには錯体全体の電荷をコントロールする必要がある事がわかった さらに、光官能基を持つ新しい環状配位子-金属錯体の合成を行った。光官能基であるルテニウムトリスビピリジン錯体を様々な架橋基を用いて環状配位子に繋ぐ方法を検討した。その結果、3種類の新しいルテニウムーニッケル2核錯体を合成することが出来た。これらの結果は、2010年度の錯体化学討論会に発表する予定である。
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