研究概要 |
洗浄や乳化などに使用した後、不要となる両親媒性化合物(界面活性剤)の問題を解決するために、化学分解機能を付与した新しい界面活性剤の研究を行う。この化学分解性界面活性剤は、目的使用後、化学分解することにより、容易に乳化系を解消できたり、環境負荷の低減が期待できる。 本研究では、天然物由来品あるいは容易に入手可能である工業製品を出発物質として用い、できるだけ簡便な操作で効率良く合成することを念頭に置き、一般的な親水基であるポリオキシエチレン鎖を有する酸分解性非イオン界面活性剤の創製とその機能に関する研究を行う。今年度は、3種のうちタイプ1,2の合成を行い、界面物性の一部を測定した。 タイプ1では、脂肪族アルコールとクロロアセトンを、酸触媒としてp-TsOH存在下、ヘキサン中で脱水縮合させて、アセタール基を有する二鎖型中間体を合成した。収率は約60%であった。タイプ2では、長鎖ケトンとα-クロロヒドリンをp-TsOH存在下、トルエン中で脱水縮合させて、1,3-ジオキソラン型中間体を合成した。収率は約90%であった。 次に、中間体とポリエチレングリコール(PEG)、粉体水酸化ナトリウム、相間移動触媒(PTC)をジオキサン中で撹拌し、その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的物を得た。 得られた分解性界面活性剤は、良好なミセル形成能を有していた。水溶性は、二疎水鎖一親水基型のため、通常の界面活性剤と比べると若干低下した。これらの起泡力は、泡立ち、泡切れに優れていた。流動パラフィンや大豆油による乳化力は、通常型の界面活性剤と同程度であった。酸による分解性を評価した結果、1N HClでは添加直後、pH3で約5時間後にほぼ完全に分解した。化審法に規定された方法に準じて微生物による生分解度試験を行った結果、これらの分解性界面活性剤の生分解度は、通常型の界面活性剤よりも優れていた。
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