研究概要 |
本研究では酵素RNA分子であるハンマーヘッド型リボザイム(HHRz)を用いた遺伝子治療法開発を目指す. HHRzによる遺伝子治療ではmRNAにUC、UA、UUのいずれかの配列が無ければ異常mRNAを切断できないが, これがリボザイムの遺伝子治療応用への障害となっている。そこで本研究では三次元構造に基づきリボザイムを改変し、上記以外の配列も切断可能なリボザイムの創製を目指す(切断必須配列の改変・拡張). 上記の目的を達成するため本年度は以下の実験を行った. 1) HHRzの基質となるにはUX(X≠G)配列が必要であるが、X=Gでも切断可能なHHRzを作製し、その切断活性を検証する。コア配列に改変(G-C->C-G conversion)を加えたHHRzを作成し、X=Gでも不活性構造を形成しないと期待されるリボザイムを調製した。標的配列としては鎌形赤血球病の点変異配列および三次元構造解析がなされているHHRzの基質配列を選んだ. 2) 本実験ではUX配列のU(U16.1)がC(C16.1)に置換されても切断可能なリボザイムを設計する。切断配列にUが必要な理由は、塩基対の相手がA15.1であること、さらにA15.1残基がG5残基とvan der Waals接触・水素結合をして基質結合ポケットを形成しているためである。この三次元相互作用を保存しつつUをCに置換するにはC16.1の塩基対の相手をイノシン(I15.1)にすればよい。そこで、天然のRNAには通常含まれないイノシン残基を化学合成によりRNA分子中に導入し、上記改変配列を有したCX配列切断リボザイムを調整することに成功した。
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