細胞膜表層上の糖鎖に対する糖結合性タンパク質の認識性に及ぼす糖鎖密度の効果、特に糖鎖のクラスター化がその認識性に重要であるベロ毒素、インフルエンザウイルスが認識する糖鎖を合成し、細胞膜表層をモデル化した固体基板上に精密に構築することを目的としている。 平成22年度は前年までに得られた糖鎖固定基板へのベロ毒素の結合挙動をQCM基板上にてリアルタイムモニタリングの知見をもとに糖鎖集合構造への相互作用メカニズムをさらに詳細に明らかにするために、1分子計測による解析を行った。具体的には、SPMフォースカーブ測定により、ベロ毒素の糖鎖への結合親和性を検討したところ、糖鎖の集合性によって相互作用力の違いを観察することができたのはもちろんのこと、"有効結合長"などの観点から相互作用メカニズムを明らかに出来た。 また、本年度は多糖合成酵素の反応メカニズムの解明について検討した。マイカ基板に固定化したデキストランスクラーゼ多糖合成酵素とチップに修飾したデキストラン糖鎖オリゴマーの相互作用力をフォースカーブ測定により、詳細に解析したところ、スクロースモノマーの添加に伴う糖鎖伸長過程を追跡することができ、酵素反応の新たな解析法を見いだした。さらに、高速AFMによる1分子観察に取り組んだところ、相互作用挙動および触媒作用をリアルタイムで観察できた。動力学的解析などの定量評価が可能な段階まで達成できた。
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