光合成膜中での初期過程をになう膜タンパク質複合体(アンテナ複合体(LH2)および反応中心-アンテナ複合体(LH1-RC))の集合形態と機能との相関を明らかにするために、直接観察可能なプラットフォーム(固定化平面脂質二分子膜)を作成し、そこに膜タンパク質を組織化し、原子間力顕微鏡により直接観察する。平成21年度の成果は以下の通りである。(1)前年度に作成したピラー構造を有する固定化脂質二分子膜を調製し、LH2およびRC-LH1をそこに導入し、その原子間力顕徽鏡観察により集合構造が観察された。これらの膜タンパク質は膜中で側方拡散性を示すことから、膜導入後から自発的に形成された集合体であることが示唆された。(2)脂質二分子膜中に再構成したタンパク質を調製した。同種の菌種から得られたLH1-RCとLH2の組み合わせでは、両タンパク質がともに膜中に組み込まれたが、異種の菌種由来のタンパク質の組み合わせでは、それぞれ分離した状態で膜中に組み込まれたことから、タンパク質間相互作用が重要であることが示唆された。(3)上述のタンパク質再構成脂質二分子膜の原子間力顕微鏡による分子解像度での直接観察を行った。その結果、上記(1)の系と比較し、格段高い解像度で集合体形成が観察できた。またここで、サンプル調製の工夫により、局所的な集合状態を制御できる手法を開発でき、天然類似の集合体の構築が可能となった。(4)(3)の手法により、透明電極上に集合体を組織化させ、プリミティブな結果ではあるが、光電流の発生が確認できた。
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