光合成膜中での初期過程をになう膜タンパク質複合体(アンテナ複合体(LH2)および反応中心-アンテナ複合体(LH1-RC))の集合形態と機能との相関を明らかにすることができれば、光エネルギー捕集およびその利用ためのデバイス化に重要な知見を得ることができる。本研究では、集合形態を直接観察可能なプラットフォーム(固定化平面脂質二分子膜)を作成し、そこにLH2およびLH1-RCを組織化、原子間力顕微鏡(AFM)および全反射蛍光顕微鏡(TIRFM)により直接観察し、そのエネルギー移動を観測した。(1)平面脂質二分子膜を(i)基板上に直接形成、(ii)アビジン-ビオチン結合を介して生体膜類似の内部水相を付与する形成手法により、LH2およびLH1-RCを安定に平面脂質二分子膜中に導入する事ができ、さらにLH2/LH1-RCの分散状態を変化させることに成功した。(2)(1)の手法を用いることにより、AFMによりLH2およびLH1-RCを分子解像度で観察することに成功し、さらにLH2/LH1-RC共存系においても集合状態を定量的に評価した。(3)LH1-RCの接合タンパク質(PufX)を大量発現系により調製し、LH1複合体形成におけるPufXの役割を明らかにした。(4)作成した異なるLH2/LH1-RC集合系において、均一分散系よりも、不均一な集合系においてより高いエネルギー移動が認められ、分子集合状態が機能に相関していることを示唆した。
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