研究概要 |
汎用生体触媒(基質適用範囲の広い酵素)であるリパーゼとカルボニル還元酵素を合理的変異導入あるいはランダム変異導入により進化させて高機能化するとともに、有用な光学活性化合物を不斉合成するべく研究を進めている。(1)リパーゼの合理的進化:苦手基質に対する触媒活性とエナンチオ選択性が同時に向上した二重変異体(I287F/I290A)を昨年度中に創製していた。今回、反応速度定数を決定することにより、これらの変異導入が(基質結合段階ではなく)遷移状態を改変できており、速く反応するエナンチオマー(R体)をより一層加速させ、遅く反応するエナンチオマー(S体)をより減速させていることを証明した。また、新たに三重変異体(I287F/I290A/Q292A)も創製して比較したところ、二重変異体の方が優れた触媒性能を示した。(2)カルボニル還元酵素のランダム変異導入による進化:今回、改善した変異導入条件を用いて、1,239個の変異体から野生型酵素を上回る変異体酵素を3つ選別した。再現性も確認できたため、現在、DNA配列を決定中である。(3)ジフルオロメチレン基を有する光学活性アルコールの不斉合成:昨年度、カルボニル還元酵素を高発現する遺伝子組換え大腸菌を用いて、ジフルオロメチレン基を有するケトンを不斉還元することにより対応する光学活性アルコールを不斉合成していた。今回、このジフルオロメチレン基を有する光学活性アルコールよりβ-アミノ酸誘導体を合成することに成功した。
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