研究概要 |
広島大学放射光科学研究センターの真空紫外円二色性(VUVCD)分散計を用い、以下の4点について研究した。[1]アミノ酸配列レベルでのタンパク質の二次構造予測:アミノ酸配列情報を解析できるニューラルネットワーク(NN)法を、VUVCDから決定される二次構造の含有率と本数の結果に回帰させることで(VUVCD-NN法)、二次構造の部位を75%の高精度で予測できる新規構造解析ソフトを開発した(proteins,掲載済み)。[2]ジスルフィド結合欠損リゾチームの網羅的二次構造解析:4本のジスルフィド結合を順次欠損した13種の変異体のVUVCDスペクトルを170nmまで測定し、上記で開発したVUVCD-NN法を用いて、α-ヘリソクスとβ-ストランドの保存状態を解析し、立体構造保持における各ジスルフィド結合の役割を明らかにした(proteins,印刷中)。[3]糖糖のVUVCDスペクトル解析:コンドロイチン、コンドロイチン硫酸(A,B,C)、ヒアルロン酸、ヘパリンおよびそれらの構成糖のVUVCDスペクトルを測定し、その帰属を行った(Biosci. biotech. Biochem.印刷中)。[4]酸性糖タンパク質α_1-acid glycoprotein(AGP)の二次構造:AGPはリン脂質との混合によりα-ヘリックスは14%(3本)から50%(8本)に、β-ストランドは38%(8本)から5.6%(2本)へと変化し、脂質との相互作用により大きな二次構造変化が誘起されることがわかった。NN法により二次構造部位を予測した結果、これらの構造変化は主としてリガンド結合部位で起こっており、構造と機能との関係について重要な知見が得られた(論文作成中)。 これらの結果は、VUVCD分光法が構造未知タンパク質の構造解析に有効であることを示している。
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