本年度は、昨年度合成したホルミルペプチド受容体サブタイプに選択的なアゴニスト及びアンタゴニストの二量体のヒト好中球活性の特異性を評価した。アゴニストに関しては以前より開発を進めていたfMLPのオリゴエチレングリコール架橋体が、ヒト好中球遊走活性と活性酸素放出活性を識別できることを利用することにした。アンタゴニストダイマーに関しては、ホルミルペプチド受容体サブタイプFPRに選択的なBoc-MLP及びBoc-FLFLFの二量体を合成した。さらにFPRL1選択的アンタゴニストの代表であるWRWWWWの二量体を数種合成し、架橋部位及び鎖長依存性を検討した。 ペプチドの合成は迅速固相合成法を用いた。目的のペプチドは疎水性が高く、合成不溶担体上で非特異的に吸着、会合することが予想されたため、合成後の精製操作を簡素化するよう、反応収率の高いHBTU-HOBt法を用い合成した。ペプチドの架橋は、固相合成で二量体合成が簡便におこなう為、N末端もしくはC末端にシステイン残基を組み込み、合成、脱樹脂後、システイン残基のチオール基を酸化・ジスルフィド架橋したシスチン架橋を用いた。生理活性は、ヒト好中球及び分化させたヒト白血病細胞HL-60でのcytochrome C法による活性酸素生成とFura-2を用いた細胞内カルシウム濃度変化について評価した。その結果、Boc-FLFLFのダイマーは、架橋鎖長に依存して生物活性が変化し、特に架橋鎖長の最も短いペプチドで最大活性を示した。さらに、アンタゴニストBoc-MLPと相当するアゴニストfMLPの至適鎖長を比較したところ、アゴニストとアンタゴニストで異なっていることがわかった。このことからアゴニストとアンタゴニストの結合様式が異なることが示唆された。
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