研究概要 |
本研家課題の目的は、液滴モデルに基づいた'分子ぬれ性'に着目して、原子レベルで層構造制御することにより、薄膜形成時のマイグレーションを制御し、高品質・高結晶性の有機薄膜を得ることである。分子のぬれ性制御には、具体的にはペンタゼン単分子層を用いることで制御できることがわかっており、これをベースにして研究を進める。これまでにC60薄膜やルブレン薄膜について、結晶性(X線・RHEED)・電気特性が劇的に変化することをわかってきているが、ほぼ無数にある有機分子材料について、単分子バッファー層による分子ぬれ性制御がどれだけ適用可能であるか不明である。本研究課題では、分子ぬれ性についてさらに多くの有機・バイオ材料、特にπ共役系でない材料系でも適用可能であるかどうかを調べ、普遍的な機構解明を進めることを中心に研究を進めている。 平成20年度では、π共役系でない材料として、まずDAPA(2,3-diaminopropionic acid)の薄膜化を行った。DAPAは二酸化炭素透過性に優れていて温暖化ガスであるCO2を効率よく分離できる材料として注目されており、膜の結晶性が制御できれば、分離メカニズムの解明や分離能の制御が可能である。今回、赤外線半導体レーザーMBE法に用いることにより、良質な薄膜化に成功し、赤外線吸収スペクトルから膜中の分子と原料分子と同じ構造をもっている薄膜であることがわかった。今後、ペンタセン単分子バッファーとコンビナトリアル手法を使って積層構造をつくることにより、薄膜モフオロジーがどのように変化するかを調べていく。
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