本研究課題の目的は、液滴モデルに基づいた分子ぬれ性'に着目して、原子レベルで層構造制御することにより、薄膜形成時のマイグレーションを制御し、高品質・高結晶性の有機薄膜を得ることである。分子のぬれ性制御には、具体的にはペンタセン単分子層を用いることで制御できることがわかっており、これをベースにして研究を進める。これまでにC_<60>薄膜やルブレン薄膜について、結晶性(X線・RHEED)・電気特性が劇的に変化することをわかってきているが、ほぼ無数にある有機分子材料について、単分子バッファー層による分子ぬれ性制御がどれだけ適用可能であるか不明である。本研究課題では、分子ぬれ性についてさらに多くの有機・バイオ材料、特にπ共役系でない材料系でも適用可能であるかどうかを調べ、普遍的な機構解明を進めることを中心に研究を進めている。 平成21年度では、Bis(ethylenedithia)tetrathiafulvalene;BEDT-TTFに着目してバッファー層による制御を試みた。BEDT-TTFは有機超伝導体の構成分子としてよく知られており、高い電子活性が期待される分子であるが、ロッド状の成長をしやすく、均質な薄膜の報告例はない。ペンタセン-ルブレンのヘテロバッファーを用いることによって、ナノロッドの成長を抑制することに成功した。バッファー層による違いは見られたものの、まだまだ配向性は良好ないため、今後は成長温度の最適化を進めることによって、より均質な配向薄膜の作製をすすめる。
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