有機EL素子の開発において、より高効率で発熱の小さなキャリア輸送材料が必要とされている。有機EL素子のホール輸送材料として用いられるTPDとその誘導体の芳香族アミンにおける振電相互作用定数を計算し、さらに結果を研究代表者らにより提案されている振電相互作用密度の概念を用いて解析した。3級芳香族アミンに於いては振電相互作用密度は窒素原子上に正と負の値でほぼ対称的に局在し、そのため相互作用密度の相殺が生じており、このことが小さな振電相互作用定数を与える原因であることがわかった。また得られた相互作用定数を用いてKeldyschグリーン関数理論に基づき非弾性電流を計算した。振電相互作用定数が小さいことを反映し、オリゴチオフェン等と比較して1/2-1/3程度に発熱が抑制されていることが分かった。さらに振電相互作用密度の局在は、ホールと電子の間のクーロン相互作用により生じていることがわかった。これらの知見は新規キャリア輸送材料の設計に有用なものであると考えられる。
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