有機光電変換素子は、太陽電池あるいは光検出器としての応用が期待され、活発な研究が行われている。有機光電変換素子用材料には一般に高い電荷移動度が求められ、現在、結晶性材料が主な研究対象となっている。一方、アモルファス材料は、結晶性材料に比べて一般に電荷移動度が低いが、粒界がなく均質な薄膜を形成し、有機光電変換素子用材料として有望であると期待される。 研究代表者は、昨年度、高い正孔移動度を有する新規正孔輸送性アモルファス分子材料、tris[4-(2-thienyl)phenyl]amine(TTPA)およびtris[4-(5-phenylthiophen-2-yl)phenyl]amine(TPTPA)をp型有機半導体、C_<60>をn型有機半導体として用いる有機光電変換素子を作製し、これらが擬似太陽光照射下において高い変換効率(1.5-1.7%)を示すことを見いだした。 本年度は、変換効率の向上を目指して、C_<60>に比べて分光感度特性に優れるC_<70>をn型有機半導体として用いる有機光電変換素子の作製と評価を行った。また、将来の湿式法による製造プロセスへの可能性を検討するため、可溶性C_<60>誘導体とTTPAを用いるバルクヘテロ接合型素子の作製とその光電変換特性の評価を行った。 TPTPA/C_<70>を用いる有機光電変換素子は、擬似太陽光照射下において、短絡光電流3.6mAcm^<-2>、開放端電圧0.90V、fill factor 0.60、変換効率2.2%を示し、C_<60>を用いる素子に比べて約1.3倍の性能向上を達成した。また、溶液からのスピンコート法により作製したTTPA/可溶性C_<60>誘導体を用いるバルクヘテロ接合型素子の変換効率は1.3%であり、アモルファス分子材料が、乾式製造プロセスのみならず、湿式製造プロセス用のp型半導体材料としても有望であることを示した。
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