研究概要 |
本研究では色素増感太陽電池の対極材料として,化学的安定性,コストの面で導電性高分子より優れた材料であるカーボン材料に着目した.中でも,中空球状のシェル構造を持つカーボン粒子(カーボンナノシェル)はグラフェンに欠陥が多く,それにより触媒活性点であるエッジが多く存在すると報告されている.そこで,遷移金属錯体を用いてカーボンナノシェルを合成し,白金系材料と同等以上のセル性能を有する対極材料を開発することを目的とした. カーボンナノシェルはフルフリルアルコールにフェロセンを添加し80℃で重合させ,これをHe雰囲気下,700℃で焼成をすることによって合成した.TEM, XRD測定によりフルフリルアルコールとフェロセンから合成されたカーボンがナノシェル構造を持つことが確認された.一方で,フェロセンを添加しなかったカーボンにはナノシェル構造は確認できず,ガラス状炭素に近い構造を持つカーボンであることが分かった.次に、この合成したカーボンナノシェルとケッチェンブラックをブタノールに分散させペースト作製し、これを用いてドクターブレード法で導電性ガラス基板に塗布することにより対極膜を作製した.この対極を用いた太陽電池の電流-電圧特性(I-V特性)の測定を試みた.カーボンナノシェル/ケッチェンブラック混合対極はケッチェンブラックのみの対極と比較して,I^-_3還元ピークの電位が高電位側にシフトしており,1^-_3還元に対する触媒活性が優れていることがCV測定により確認された.また,カーボンナノシェル/ケッチェンブラック混合対極を使用することでセル性能が向上することが分かった(η=4.24%).これは,カーボンナノシェルを混合すると,反応活性点が増加し,それにより過電圧が低下し,光電流密度増加,光電変換効率向上に繋がったものと考えられる.
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