温和な条件下で分解可能な加水分解性及び光分解性界面活性剤を合成し、環境低負荷型機能性材料としての応用を検討した。 1. ベタインエステル基を有するカチオン性界面活性剤を乳化剤として用いた乳化重合により種々のポリマーラテックスを調整し、紙表面改質剤への応用を検討した。重合条件、塗膜条件、ポリマーの種類等を詳細に調べると共に塗膜方法(溶液滴下法、浸漬法、添加剤の添加等)を改良することで、紙表面特性(平滑性、耐水性等)のさらなる向上、機能性(機水性・撥油性)の付与を達成した。 2. 上記のラテックス水溶液がカーボンブラックを容易に分散できることに着目し、水溶性顔料インクへの応用を検討した。その結果、バインダーが不要で、紙への定着性、速乾性、耐水性の高い顔料分散剤として利用可能であることを明らかにした。 3. ベタインエステル基を有する新規脂溶性カチオン界面活性剤を溶媒抽出剤として用いたアニオン性基質の溶媒抽出を詳細に検討した。その結果、活性剤の選択により疎水性から親水性まで種々の水溶性基質を温和な条件下で抽出分離できることがわかった。また、染色工程における染色助剤としての利用が示唆された。 4.ベンジルエステル基を有する新規アニオン性界面活性剤が汎用の界面活性剤と同等の優れた性能を有すること、紫外光照射により分解し界面活性能を消失すること、乳化重合用乳化剤として応用できることを見出した。 なお、有用・有害物質の処理システムの構築、界面活性剤の環境負荷の低減効果の評価については現在検討中である。
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