20年度はイットリウム(Y)を異種元素とした添加した条件で浮遊帯域溶融法により育成したルチル単結晶の欠陥評価を行った。これまでのEPMA法では検出困難であった結晶中のY量をICP質量分析により2ppm程度と求められ、その結果、結晶中へのYの偏析係数が3×10-4程度と非常に小さいことがわかった。また、この結晶の化学エッチングを行ってエッチピット密度の定量とその分布を計測した。その結果、従来の浮遊帯域洋風法で育成した無添加のルチル単結晶のエッチピット密度が7×10^<-4>/cm^2程度であったのに対して、イットリウムを2ppm程度添加したルチル単結晶場合、1/3程度の2×10^<-4>/cm^2程度であることがわかり、従来の方法で育成した結晶と比較して高品質化されていることを明らかにした。Yを添加した結晶と無添加の結晶の両方についてロッキングカーブも測定し、その半値幅も計測し、比較した結果、Y添加した結晶の結晶が無添加の結晶に比べて結晶性が高いことも確認できた。現時点でこうしたルチル単結晶に対するY添加効果がどのような機構で発現しているかは不明であるので、その要因を探るために、結晶育成時の成長界面に着目し、その界面形状を調べるなど研究もはじめた。現時点では、界面形状は結晶側から融液側に対して凸状になっていることがわかっている。21年度はこの界面形状の関して詳細に研究するだけでなく、Y以外の異種元素添加効果の詳細について調べたいと考えている。
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