本研究では、(1)クロロエタンなどの飽和有機塩素化合物の分解・無害化に適した光触媒表面の構築、さらに、(2)エチレンや塩化ビニルなどの有用な化合物への変換に適した反応系の確立、という2点を目的としている。目的(1)を成し遂げるためには、「なぜ酸化チタンでは、光触媒活性が低下し、一方、硫酸含有酸化チタンでは触媒活性が低下しないのか」、を明らかにすることが必要である。そこで、平成20年度は、酸化チタンと硫酸含有酸化チタンをゾル-ゲル法で合成し、流通型反応装置を用いて、種々の反応条件下でクロロエタンガスの光触媒分解を行った。その結果、酸化チタンでは反応初期において、光照射時間の増加とともに分解効率が著しく減少し、その後一定値を示した。一方、硫酸含有酸化チタンでは光照射中、分解効率は低いながらもほぼ一定値を保持した。この両者の比較を種々の反応条件で行った結果、酸化チタンを用いた場合に得られた最終的な分解効率は、硫酸含有酸化チタンの分解効率とほぼ等しいことがわかった。購入したFTIR拡散反射測定用コレクターを用いて、反応前後での触媒表面を測定した。さらに、触媒にピリジンを吸着させてFTIRを測定することにより、酸化チタンでクロロエタンを分解すると触媒表面にブレンステッド酸点が生成することや、硫酸含有酸化チタンでは反応前からブレンステッド酸点が存在していることがわかった。つまり、クロロエタンの光触媒分解では、ブレンステッド酸点が形成されていない触媒表面の方が高活性であり、反応とともに酸点が形成された後は、分解効率は低いながらも定常状態を示すようになることがわかった。
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