研究概要 |
本研究は,電子メディエーターと光捕集機能をもつカチオン性有機分子を層間にインターカレートしたナノ多層マンガン酸化物の作製と可視光応答型光電変換機能の発現を目的とする。平成20年度は,光機能分子であるポルフィリンおよび酸化還元メディエーターであるメチルビオロゲンをインターカレートしたマンガン酸化物積層複合体を電気化学的手法によって透明導電性ガラス電極上に作製し,合成条件の最適化を行った。 (1)メチルビオロゲン/マンガン酸化物薄膜の作製 メチルビオロゲンと硫酸マンガンを含む水溶液のアノード電解によってメチルビオロゲンをインターカレートしたマンガン酸化物薄膜を作製した。生成物の構造をX線回折,走査電子顕微鏡,赤外分光,紫外可視分光法等により調べ,電解浴組成,印加電位が生成物の構造に与える影響を明らかにした。また,薄膜被覆電極の電気化学測定においてメチルビオロゲンと基板電極間の電子授受が認められた。 (2)ポルフィリン/マンガン酸化物薄膜の作製 カチオン性ポルフィリン(テトラメチルピリジルポリフィリン)と硫酸マンガンを含む水溶液をアノード電解することによってポルフィリンをインターカレートしたマンガン酸化物薄膜を作製した。(1)と同様にして電解浴組成と印加電位の影響を調べ,高結晶性物質を得るための合成条件を特定した。バルクのポルフィリンが会合状態であるのに対し,層間のポルフィリンは孤立した状態で存在することを明らかにした。
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