研究概要 |
層状ペロブスカイト型構造をとるBa_<n+1>Sn_nO_<3n+1>(n:自然数)は,n段のペロブスカイト型ブロック(BaSnO_3層)と1段の岩塩型ブロック(BaO層)が交互に積層した層状酸化物である。Ba_2SnO_4(n=1), Ba_3Sn_2O_7 (n=2), BaSnO_3 (n=∞)はいずれも電気的絶縁体であるが,BaSnO_3についてはBaサイトへのLaドーピングあるいはSnサイトへのSbドーピングによりN型伝導体になることが知られている。一方,n=1及びn=2の層状酸化物については,ドーピングなどによる伝導体化については報告されておらず,電気伝導性が見出されれば,自然数nとともに電気伝導性がどのように変化するかということだけでなく,新規な透明伝導体や超伝導体,あるいは熱電材料などとして興味がもたれる。本年度は,n=∞のBaSnO_3について,放電プラズマ焼結法を用いて緻密なBa_<1-x>La_xSnO_3及びBaSn_<1-x>Sb_xO_3セラミックスを作製し,高温での電気伝導率,ゼーベック係数の測定から熱電特性を調べた。まず,Ba_<1-x>La_xSnO_3については,クエン酸錯体重合法を用いてBa_<1-x>La_xSnO_3 (x=0.00〜0.07)の微粉末試料を合成し,次いで,放電プラズマ焼結により緻密化試料とした。粉末X線回折からLa固溶限はx=0.03と評価され,いずれの試料も相対密度が93〜97%の緻密なセラミックスとなった。これらのセラミックスについて,空気中100〜800℃の温度範囲で電気伝導率σとゼーベック係数Sを測定したところ,Laを固溶した試料はいずれもN型の縮退半導体的挙動を示した。ゼーベック係数のLa濃度依存性から,x=0.03のLa固溶限までは連続的に電子キャリアがドープされていることがわかった。出力因子S^2σはLa固溶により増加し,とくにx=0.01で0.8×10^<-4>〜2.8×10^<-4> Wm^<-1>K^<-2>の比較的高い値を示した。BaSn_<1-x>Sb_xO_3セラミックスの熱電特性については,現在評価中であり別途報告予定である。
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