本研究課題では、層状ペロブスカイト型酸化物Ba_<n+1>Sn_nO_<3n+1>(n=自然数)において、Ba_2SnO_4(n=1)、Ba_3Sn_2O_7(n=2)、BaSnO_3(n=∞)の3種の酸化物について、N型伝導体化したカチオン置換固溶体を合成し、その緻密化セラミックスの高温熱電特性を評価することにより、熱電材料としての可能性を解明することを主目的としている。3年間の研究計画の内、2年目にあたる平成21年度の研究により、主に以下の2点の研究成果が得られた。 1.BaSnO_3(n=∞)について、クエン酸錯体重合法と放電プラズマ焼結法により、ドーパントであるLaの濃度を精密に制御したBa_<1-x>La_xSnO_3緻密セラミックスを作製した。La濃度がx=0.00~0.07のセラミックスについて100~800℃の温度範囲で電気伝導率とゼーベック係数を測定した結果、LaをドープしたセラミックスはいずれもN型縮退半導体であり、La固溶限界であるx=0.03程度まで電子キャリアが連続的にドープされることがわかった。出力因子はx=0.005のセラミックスに対して最高となり、1070Kで4.3×10^<-4>Wm^<-1>K^<-2>の値を示した。また、x=0.005のセラミックスに対して測定した熱伝導率の値から、無次元性能指数ZTは1070Kで0.098と評価された。この結果から、固溶体形成などによる性能向上が示唆されるため、研究計画の最終年度には、Sr固溶体などの作製と評価を行い熱電特性の向上を図る計画である。 2.BaSnO_3(n=∞)について、CoをドープしたBaSn_<1-x>Co_xO_3緻密セラミックスを作製した。ペロブスカイト型単相が得られたx=0.00~0.15のセラミックスについて100~800℃の温度範囲で電気伝導率とゼーベック係数を測定した結果、CoをドープしたセラミックスはいずれもP型半導体であることがわかった。いずれのセラミックスについても出力因子は10^<-7>Wm^<-1>K^<-2>オーダー以下の値であったが、P型半導体の作製はN型と組み合わせた素子応用に向けて意義ある結果と考えられる。
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