研究概要 |
本研究課題では、層状ペロブスカイト型Ba_<n+1>Sn_nO_<3n+1>(n=自然数)の内、Ba_2SnO_4(n=1)、Ba_3Sn_2O_7(n=2)、BaSnO_3(n=∞)の酸化物を対象として、電気伝導性を有するカチオン置換固溶体を合成し、そのセラミックスの高温熱電特性を評価することにより、熱電材料としての可能性を解明することを主目的としている。3年間の研究計画の最終年度である平成22年度について、研究成果の概要を以下に記す。 1.Ba_2SnO_4(n=1)及びBa_3Sn_2O_7(n=2)について、種々のカチオン置換体を合成したところ、Ba_<2-x>La_xSnO_4(x=0.00-0.10)、Ba_2Sn_<1-x>Sb_xO_4(x=0.00-0,05>、Ba_2Sn_<1-x>Co_xO_4(x=0.00-0.05)、Ba_<3-x>La_xSn_2O_7(x=0.00-0.10)の組成で単相の層状ペロブスカイト型固溶体が得られた。いずれの固溶体も電気絶縁体であり電気伝導性はみられなかった。電気絶縁性の一因として、層状結晶におけるSnまたはドーパントイオン上の電子の局在が考えられた。 2.BaSnO_3(n=∞)について、カチオン置換によりN型及びP型セラミックスを作製し、高温(100~800℃)での熱電特性を調べた。N型については、(Ba_<1-x>Sr_x)_<0.995>La_<0.005>SnO_3(x=0.0-0.6)セラミックスを作製し、Ba_<0.995>La_<0.005>SnO_3の熱電特性に対するSr固溶効果を調べた。電気伝導率とゼーベック係数のSr濃度依存性から、キャリア濃度はSr濃度にほとんど依存しないが、移動度はSr濃度の増加とともに減少することがわかった。これはSr濃度の増加とともにSnO_6八面体の連結角度が180゜からしだいに減少するという構造変化と対応付けられた。出力因子はx=0.0で最も高くなり、1070Kで4.3×10^<-4>Wm^<-1>K^<-2>の比較的高い値を示した。P型については、BaSn_<1-x>Co_xO_3(x=0.00-0.15)セラミックスを作製し、出力因子と電気伝導機構を調べた。出力因子はx=0.15で最も高くなり、1070Kで2.7×10^<-7>Wm^<-1>LK^<-2>の値を示した。P型伝導の起源として、混合原子価状態にあるCo^<2+>とCo^<3+>の間の正孔ホッピングが考えられた。同一母体酸化物でN型及びP型セラミックスが得られたことは、熱電材料への展開に向け重要である。
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