研究概要 |
デンドリマーという規則的な分岐骨格を利用して半導体特性を持つ液晶性分子部位を集束し, 広い温度範囲で安定な液晶相を示す新規液晶性有機半導体の合成とキャリア移動性を検討した。特に本研究ではキャリア輸送性に及ぼす分子構造の影響を検討することを目的として, キャリア輸送性分子部位であるメソゲン(液晶基)とデンドリマーコアとを連結するアルキルスペーサ長を系統的に変化させた4種のデンドリマー液晶の合成を試みた。アルキル炭素数が6, 8, 10, 12のデンドリマー液晶でいずれもスメクチックAとE液晶相を発現し, time-of-flight法で測定したキャリア移動度は10^<-3>〜10^<-2>cm^2/Vsオーダーの高い移動度を得た。スペーサが長くなるほど液晶組織が成長し, キャリア移動度が速くなる傾向が認められ, スメクチック層の成長はキャリヤのホッピング移動に有利に働くことを見出した。 更に, メソゲン末端の影響を検討するために, フェニルナフタレン基の末端にアルキル鎖を持たないデンドリマーを合成し, その液晶性と液晶構造を検討した。その結果, この試料ではレキュタンギュラーカラムナー(Col_r)液晶相が発現することを見出した。末端のアルキル鎖を無くすことで, メソゲン間同士のπ-π相互作用に大きな影響をもたらすことが明らかとなった。この光学組織はこれまでの試料と比較すると細かく, ドメインサイズが小さいと推定されるにも関わらず, 10^<-2>cm^2/Vsオーダーの比較的速いホール移動度が得られた。この結果はカラムナー液晶相が高い移動性を発現することを示唆している。 以上のように, 本研究で室温から100℃以上の温度域まで, 10^<-2>cm^2/Vsという高い移動度を実現し, デンドリマー液晶化という分子設計手法が液晶性有機半導体において極めて有用であることを見出した。
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