研究概要 |
デンドリマーという規則的な分岐骨格を利用して半導体特性を持つ液晶性分子部位を集束し,広い温度範囲で安定な液晶相を示す新規液晶性有機半導体の合成とキャリア移動性を検討した。特に本研究ではキャリア輸送性に及ぼすデンドリマー液晶の世代の影響を検討することを目的として,デンドリマーコアの世代を系統的に変化させた4種のデンドリマー液晶の合成を試みた。更に,薄膜内におけるデンドリマー液晶の高次構造を解析した。ポリプロピレンイミンデンドリマーコアの世代を第0,1,2,3世代と変化させ,それぞれの末端にフェニルナフタレンをアルキルスペーサを介して付加した。0世代から3世代のデンドリマーは室温からスメクチック(Sm)E相,SmB相,SmA相を形成していると判断し,世代の増加により液晶温度範囲が増加することがわかった。キャリア移動度の測定を行い世代によるキャリア移動度の変化を検討した。キャリア移動度はTime-of-flight(TOF)法により測定し全ての試料で10^<-2>cm^2/Vsの高いキャリア移動度が測定された。世代の増加によりキャリア移動度は高くなり,3世代では低下した。以上の結果より,移動度と熱力学的安定性から第2世代のデンドリマーが最適な分子骨格であることを見出した。これらのデンドリマー液晶を溶液法でガラス基板上に薄膜を作製し,膜中におけるデンドリマー液晶分子の配向性について解析した。薄膜X線構造解析のIn-plane法から薄膜内において,デンドリマー液晶分子は基板に対して垂直に配向し,スメクチック層構造を形成していることが分かった。即ち,デンドリマー液晶特有の自発的垂直配向性が薄膜内でも発現しており,トランジスタ構造に極めて有利な配向構造を比較的簡便に形成出来ることが見出された。
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