研究概要 |
デンドリマーという規則的な分岐骨格を利用して半導体特性を持つ液晶性分子部位を集束し,広い温度範囲で安定な液晶相を示す新規液晶性有機半導体の合成とキャリア移動性を検討した。特に本年度の研究ではデンドリマー液晶のメソゲン末端のアルキル基の効果を検討することを目的とし,末端のアルキル鎖の炭素数を連続的に変化させたデンドリマー液晶を合成した。これらの試料の液晶相転移挙動,液晶相の構造解析を行い,さらにキャリア移動度を測定し,有機半導体としての基礎物性を検討した。ポリプロピレンイミンデンドリマー第1世代に付加させるフェニルナフタレンメソゲンの末端アルキル炭素数nを0,1,2,4,8個と変化させた5種の試料を合成した。n=0~2の試料においては室温でヘキサゴナールカラムナー相が形成が示唆され,末端が液晶相の形成に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。n=2の試料は昇温に伴い,カラムナー相がスメクチック相に転移した。これ以上の長さになると,室温ではスメクチック(Sm)E相を形成し,昇温に伴いSmB相,SmA相を形成することが分かった。これらの試料のキャリア移動度をTime-of-flight (TOF)法により測定した結果,室温においては全ての試料で10^<-2>cm^2/Vsの高いキャリア移動度が測定された。以上の結果より,フェニルナフタレン骨格が分子間で重なる液晶構造を形成することにより,その間でキャリアがホッピング伝導するパスが形成されるため高い移動度を発現することが示唆された。即ち,デンドリマー液晶特有の高次の液晶構造形成が発現しており,有機半導体として極めて有利な熱力学的に安定した配向構造を比較的簡便に形成できることを見出した。
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