研究概要 |
本研究は,通常の溶液重合と同じ操作で,水可溶性グラフト又はブロック共重合体と同じ物性を持つ高分子包括ナノ架橋体(PENG)を多量・安価に合成するための手法の確立を最終目標とし,そのFirst Stageの検討を行なうものである。具体的には,ナノ架橋体網目を作る高分子(polyM)と,網目の中に包括される高分子(polyA)の組み合わせにより,種々のPENG微粒子を合成し,その物性研究を行なうことで,合成スキーム(仮説)を実験科学的に検証し,PENGナノ粒子が汎用高分子として利用可能であること明らかにする。そのために,当該年度では,polyMとしてN-isopropylacrylamide(NIPA), polyAとしてpoly(acrylic acid)(PAAc)を用いた系(S-1),polyMとしてNIPA, polyAとして1-vinylimidazole(VI)とacrylic acid(AAc)のランダム共重合体(両性高分子電解質;copoly(VI, AAc))およびそのアナログ(poly(VI)およびpoly(AAc))を用いた系(S-4およびS-4a)を新たに追加して、合成スキームの検証と物性研究を行った。その結果,粒子半径が数百nmを持つ微粒子が80%以上の収率で得られ,粒子表面はpolyAとPolyMから成るdangling chainで覆われていると推測された。特に,動的光散乱による流体力学半径の測定では、顕著な光源波長依存が認められた。さらに、昨年度合成したPENGも含め、反対符号の電荷を持つ鎖状高分子イオンと複合体を形成し、化学料論的な範囲で、何れも水可溶な粒子内複合体であることが分かった。
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