前年度同様、ガラス製の成形型を用いて付着温度の異なる2種の粉体を同量混ぜて成形した。前年度はゴム系とプラスチック系のポリエチレン系材料を選択したが、本年度では、近年注目されているポリプロピレンとポリエチレンを用いた。前年度同様、成形条件によって厚み方向に異なる層構造が発現した。2種の粉体を順番に加えた場合、加えた順の2層構造が発現した。また、2種の粉体を同時に加え、2種の粉体の付着開始温度以上の温度で成形した場合は、海島構造を有する1層構造が発現した。さらに、2種の粉体を同時にくわえ、2種の粉体の付着開始温度間で一定時間成形したのち、さらに温度を上昇させて成形する条件では、成形体は3層構造を形成した。さらに、2種のブレンドの成形体を一軸延伸測定を行ったところ、成形体の変形初期の力学特性は、各々の成分単体の力学特性の中間の性質を示すものの、その応力レベルは、層構造により大きく異なった。また、ブレンドの成形体の弾性率は、その層構造に対応する幾何学的な和で表すことができるとする高柳モデルの推算値と完全に一致した。しかしながら、すべての試料でポリプロピレンの降伏後、試料は破断した。これは、降伏時おける各相の体積変化のミスマッチによるものであると考えられる。一方、二相間の界面には強固な結合はなくとも、二種の粉体を同時成形することで、延伸時において層間はく離がほとんど生じないレベルの接着性を付与することができた。これは、粉体レベルでの混合ののち溶融されることで、表面に互いに間入しあった構造を形成し、強固なアンカー効果を生じさせるためであり、回転成形特有のものであることがわかった。
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