研究概要 |
近年注目されているトポロジカルゲルのようにロタキサン構造の架橋点が自由に動く効果をポリマー材料に導入できれば、従来のポリマー材料より“柔軟"で“強い"性質を付与でき、実用的応用範囲が大きく広がると考えられる。そこで本年度は、接着剤や繊維、ゴムなど様々な材料に使われているポリウレタンにロタキサン架橋を導入したポリウレタンの合成とその物性評価を行った。 ポリオールにポリテトラメチレングリコール(PTMG; Mn=1000)、イソシアネートにジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いポリウレタンプレポリマーを合成し、これにロタキサン架橋構成成分となるアゾビスクラウンとアンモニウムジオールの擬[3]ロタキサンを加え、ポリウレタンを合成した。得られたポリウレタンは架橋成分となるビスクラウンの含まれている割合(^1H-NMRスペクトルから求めた)からPU0,PU11,PU33と命名し、各種物性評価(熱物性、力学物性)を行った。 DSC測定よりビスクラウンの存在割合が多いほどガラス転移温度(Tg)が高温側ヘシフトすること、TGA測定よりビスクラウンの有無で熱安定性が向上することがわかった。引張試験よりPU0の破断ひずみが36%であったのに対し、PU33は306%であった。以上のことから、ビスクラウンによるロタキサン架橋の存在がポリウレタンの従来のハードセグメント構成要素の水素結合を阻害し、熱的、力学物性を変化させることがわかった。
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