本研究の目的は、ナノ秩序化された相分離構造を持つポリマーブレンドを前駆体に用いてナノ多孔質材料を創造することおよびそれを有用な機能性材料へと変換することである。本年度は、以下の項目について研究を行った。 今年度は、前年度に確立した試料調整法、構造解析法を活用し、ナノ秩序化ポリマーブレンドの相分離構造制御および相構造の精密解析を試みた。分子鎖末端間の相互作用の強さの相構造への影響を調べるために、プロトンドナー種の構造を種々変化させ、相構造との相関を検討した。官能基を一つ持つ場合には、-SO3Hが最も高秩序な相分離構造を形成することが分かり、-COOHでは乱れが極めて多きことを見出した。さらに、官能基数を変化せせることにより、構造の秩序性を調節できることが確認された。また、これらを利用し、多孔質材料への変換を溶媒抽出法にて行った。今年度はpH応答性フィルムの調製を行い、極めて速いpH応答速度を持つフィルムを得ることに成功した。 精密構造解析に関しては、SPring-8のSAXS測定においてS/N比を向上させるための真空試料セルの作成を行い、理論解析においては、回帰分析の精度向上を試みた。前者に関しては大きな改善が見られたが、後者に関しては、変数が極めて多いため、飛躍的な向上は確認できなかった。
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