本研究では、相補的な塩橋形成を利用してらせんやインターロック構造などのトポロジーを制御することにより、二重ラセンやロタキサン、カテナンおよびノットなどの新しいトポロジカル超分子の構築法を開拓し、トポロジーに由来する新規物性・機能の探求を目指した。 昨年度までに合成に成功した塩橋構造をもつ種々の[2]カテナンについて、構成成分である2つのマクロサイクルユニットの相対運動性について詳細に検討した。この2つのユニットは塩橋を介して連結されているが、酸と塩基を交互に加えることにより、二つのユニットの相対運動性を厳密に制御できることが明らかになった。一方、[2]カテナンにZn^<2+>イオンを加えると、塩橋が切断されるとともに蛍光強度が著しく増大し、かつ長波長シフトすることを見いだした。Zn^<2+>イオンを除くと塩橋は回復し、蛍光は元に戻った。マクロサイクル成分単体ではこのようなスイッチ機能は発現しないことから、[2]カテナンの動的な構造変化に特異的な現象であると考えられる。また、トポロジカル構造の特性を明らかにするために、比較対照化合物として、アミジンとカルボン酸ユニットをもつ単環のマクロサイクルを合成した。興味深いことに、塩橋のon/offを行うためには、カテナンの場合と比べて非常に多い量の酸と塩基が必要であった。このこともカテナンのトポロジカル構造に由来する動的な性質を反映しているものと考えられる。
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