研究概要 |
本研究ではパルス着。磁法による超強力磁石開発を効率的に行うために、パルス磁場印加時の超伝導バルク内の磁束ダイナミクスに対する知見を得ることを目的とする。本年度は、微小ホール素子と熱電対を用いたパルス磁場下における磁束ダイナミクス観測システムの構築とパルス着磁に用いる超伝導バルク体開発を行った。超伝導バルク表面に微小ホール素子と熱電対を複数箇所に設置して、パルス磁場を印加したときの超伝導バルク表面の局所磁場および温度をモニターした。本研究では2段階パルス着磁(Modified Multi-Pulse technique with Stepwise Cooling : MMPSC)法を用いた。パルス磁場値やバルク設定温度などの条件を変えながら多くの実験を行った結果、バルク断面の捕捉磁場分布が中心よりも周辺部が高い"M字型"になっていることが重要であることが分かった。局所磁場の位置依存性の詳細な検討から印加パルス磁場、磁束の粘性力および最終的な捕捉磁場の関係を明らかにし、2段階パルス着磁法であるHMPSC法の有効性に対する微視的な解釈を得た。一方、Y-Ba-Cu-O超伝導バルクの磁束ピン止め特性の向上を目指して、YサイトへのLaまたはPrの微量置換効果を検討した。溶融法で作製した(Y, La)-Ba-Cu-0および(Y, Pr)-Ba-Cu-0バルクの磁化曲線から見積もった77Kにおける臨界電流密度が3テスラ以上で向上することを見出した。また、それに伴い臨界電流密度がゼロになる不可逆磁場も5テスラ以上に向上した。YサイトへのLaもしくはPrの微量置換は磁束ピン止め特性の向上に有効であることが分かった。
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