研究概要 |
(1)ルミネッセンス(PL)測定によるInN結晶性評価 昨年度のn型InNの評価に続いて、p型InNの評価を行った。この結果、p型ではn型と比較してPL強度が非常に弱く、その原因は非輻射性電子・正孔再結合を起こす欠陥種が異なるのではなく、同種の欠陥に由来し、配位場モデルにおける非輻射性再結合過程が異なるためであると理解された。これにより、InNではp型n型に関係なく同種の点欠陥または複合欠陥が非輻射性の再結合中心であることが分かり、今後そのエネルギーレベルや格子振動情報からその欠陥種の同定が望まれる。 (2)InN/InGaNヘテロ構造における2次元電子ガス移動度測定 昨年度の赤外反射分光によるInN/InGaN界面での蓄積電荷評価に続き、電解液型容量-電圧特性およびバンド接合に関する理論計算により、界面電子の移動度が小さい原因を解明した。その結果、X線回折では検知できないInN上のInGaNの微小な格子緩和が起きていること、電子波動関数がInGaN領域まで大きく染み出しており、InGaNの低移動度特性に大きく影響されていることが分かった。このため現時点ではGaNモル比を0.1程度に抑える必要があることが分かった。 (3)MgドープInNの正孔有効質量,アクセプタ活性化エネルギーの測定 MgドープInNの赤外反射・透過分光よりアクセプター価電子帯間の電子遷移による光吸収から正孔有効質量は0.59m_0程度であること、低Mg密度時のアクセプタ活性化エネルギーは70meV程度であること、温度上昇により活性化エネルギーは減少し、室温では20meV程度となり、これが高い正孔密度発現の要因となっていることが分かった。
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