研究課題
小型冷凍機によって5Tの静磁場中で冷却して励磁した高温超伝導バルク磁石を対向配置し、この強磁場空間内にターゲットカソードを配置したことを特徴とする対向型強磁場マグネトロンスパッタ装置を製作した。この装置を用い、磁極表面に発生する3.2Tの強磁場を使い、通常のマグネトロン磁極と異なる新たなスパッタ源の性能把握を目指した。実際の真空装置を製作して行なった放電実験の結果、その磁極間に1T級の強磁場を内包する空間中央に、最高650Vまでの電圧印加によるDCプラズマ放電を観察した。得られた電流電圧特性によれば、磁場の有無による放電現象の違いから、強磁場中でのマグネトロン放電がおこっていることが確認できたほか、プラズマの形状が磁場分布によって変化することを確認した。磁場の強い空間中央部ではプラズマの排斥が起こって、対向配置した磁極の周辺に高輝度のプラズマがドーナツ状に観測された。また、ターゲット材料に銅を選び、磁極間距離を変化させた場合の成膜特性を評価したところ、真空容器内部での成膜には著しい不均一性があり、スパッタ原子の平均自由行程の圧力依存性が明確となった。ICP分析による膜厚の評価結果から、その成膜速度は0.06nm/min(0.93Pa、51W)であり電力を規格化すると現行商用のスパッタ装置と同程度に実用的であることが分かり、実験機における高速スパッタ成膜が起こっていることが判明した。以上のように、対向型超伝導マグネトロンスパッタ装置の開発し、従来の数十倍にも及ぶ強磁場空間での銅薄膜の成膜に成功した。また、磁極間距離を変化させて磁場を封じ込めることにより、持続可能な安定した放電特性が確認された。今後は強磁場型の利点である0.1Pa以下の低圧でのプラズマ発生とその放電特性と成膜性能を評価していく。
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IEEE Transactions on Applied Superconductivity
巻: 22 ページ: 973-976
Physica C
巻: 470 ページ: 1201-1206