有機ELデバイスの動作メカニズムを解明することを目的とし、過渡光電流波形とともに、発光の過渡現象を捉えることによって、電流挙動と同時に発光挙動を観察し、キャリヤ注入障壁となる界面でのキャリヤ注入過程と発光過程を同時に評価する方法についての検討を行った。本検討において、キャリヤ発生層(CGL)は光励起によるキャリヤ発生と、続く有機ELデバイス構成材料へのキャリヤ注入を行う必要があり、最も重要な層である。これまで光導電有機材料であるチタニルフタロシアニン(TiOPc)とフラーレン(C60)の混合層をキャリヤ発生層として用い、有機ELデバイス部として、ホール輸送材料であるナフチルアミン誘導体(α-NPD)および電子輸送性発光材料であるアルミキノリノール錯体(Alq3)とを組み合わせたGlass/ITO/α-NPD/Alq3/CGL/α-NPD/Alデバイスの試作を行い、安定な直流特性を得ることに成功し、レーザ光照射による明確な電流と発光強度の増加を得たが、発光強度が弱く、発光の過渡現象を捉えるまでに至らなかった。そこで電圧印加時での光照射の有無による発光強度の増加率向上を狙い、発光層へのりん光材料を導入と発光層/CGL界面へのキャリヤ注入層の導入など、種々のデバイス構造を検討し、発光強度の向上と発光強度の増加率向上を得た。さらなるデバイス構造の最適化によりが過渡現象の観察が可能であると考えられる。
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