研究概要 |
昨年度までは,ゾル-ゲル法の特徴を活用するために,ディップコート法およびスピンコート法によるZnO薄膜の最適な作成条件を解明し,そのための装置の改造を進めてきた。今年度は,直径2インチのサファイア基板上に作成したZnO薄膜を分割して,水素ガス中で熱処理を行うことにより,ZnOへの水素添加効果の確認を行った。熱処理条件としては,特に処理温度に注目し,100~450℃の間で変化させた。熱処理温度が高くなるにしたがって,試料の電気抵抗は急激に低下して,400℃で処理することにより,2桁ほど低下することが明らかとなった。この結果は,水素がZnO結晶内でドナーとして働いていることを示唆している。さらに処理温度を上げると,ZnO薄膜が消失することから,水素とZnOとの反応による欠陥生成も検討する必要があるが,フォトルミネッセンスの測定からは,明らかな欠陥は観測されていない。当初の目論みどおり,ZnO中の水素が有効なドナーとして働いていると考えられる。さらに,水素処理により低抵抗化した試料を,大気中600℃で再度熱処理することにより,試料は再び高抵抗となる。この結果は,適当な熱処理条件さえ選択すれば,水素ドナーを自由に出し入れできることを示唆している。水素を電荷補償用の不純物として添加して,後に引き抜くということは,十分可能性があることが明らかとなった。残念ながら時間が不足し,アクセプター添加への応用が確認できていないが,今後の課題として研究を進める予定である。
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