研究概要 |
本研究ではLSIデバイスの高速化を担う歪シリコンウエハをX線回折を用いて評価する手法の開発を目的としている。すなわち、ナノメータオーダーの極薄歪シリコン層の歪分布を可視化するため、位相コントラストイメージングを利用した放射光トポグラフィー法により調べ、局所的な歪量を逆格子マッピングの解析により求める。 実験では放射光トポグラフはフォトンファクトリー(PF)のBL15とsPring-8のBL20B2のダブルクリスタルモノクロメータ光学系を用いてを撮影し、歪状態を調べる逆格子マッピングには大阪大学の回転対陰極X線源と4軸ゴニオメーターを用いた。 試料として用いた歪みSi(以下sSi)ウエハは次の2種類である。(1)市販の張り合わせ法によるsSi-SOI(Si On Insulator)ウエハ、(2)酸化濃縮法で作製したSGOI(SiGe On Insulator)ウエハ上にsSi層を成長させたウエハ。 試料(1)と(2)のSiGe層からのX線トポグラフをみると、(1)では直交するクロスハッチパターンが円弧状に濃淡分布しているのに対して、(2)では局所的なクロスハッチパターンがほぼウエハ全面に観測された。これらは製造プロセスの相違によるものであるが、その原因はまだ分かっていない。試料(1)および(2)のsSi層とSiGe層の厚さはそれぞれ17nm,71nmおよび25nm,30nmであり、113ブラッグ点周辺の逆格子マッピング解析からSiGe中のGe濃度と歪み緩和率を求めたところ、(1)では23%と82%、(2)では28%と56%が得られた。これより両試料のsSiの歪みは同程度と考えられる。 今回の研究成果として30cm径のSOI上の厚さ約20nmの極薄sSi層の歪み分布の可視化に成功したこと、並びに歪み量の測定が可能となったことが挙げられる。
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