研究概要 |
H21年度の研究目的は,塗布熱分解(MOD)法によるBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+x>(Bi-2212)高品質薄膜の作製と固有ジョセフソン接合(IJJ)のための穴あき基板を作製することであった。 1.Bi-2212成膜に関しては,市販のMOD溶液を用いた場合,膜厚40nm程度の単相薄膜を得ることに成功した。しかしながら,厚い膜厚を得にくいため,有機溶液を自作した。自作の有機溶液の場合,出発原料の調節が可能であるばかりではなく,溶液の粘度調節も可能である。粘性の高い方が膜厚は厚くなり,1μm程度のものが出来るようになった。As-grownでは膜面の平坦性が悪かったが,溶融過程を経ることにより平坦性の向上が見られた。また,基板面内での配向性制御のために,強磁場(9T)中での成膜も行った。MOD溶液を用いた場合だけでなく,自作溶液においても面内配向の変化を観測し,面内での回転角が1°で制御されていることが分かった。しかし,エピタキシャル成長の観点から見ると1°の回転角が説明できず,現在,さらに調べているところである。 2.成膜と並行して,穴あき基板の作製を行った。MgO基板は潮解性があるために浸水による加工が可能である。しかし,加工の進行速度が遅いため,MgOと同じ構造をもつNaCl基板を作製し,浸水による加工制御を調べた。結果は,進行速度および方向の制御性が悪く使用できないとの結論に達した。そこで,基板加工はレーザーを用いて行った。MgO基板に対しては直径約11μmφの貫通穴を作製することが出来たが,円柱状ではなくいびつな形状しか出来なかった。一方,レーザー加工で実績のある石英基板に対しては,100μmφと大きいがほぼ真円の貫通穴が作製できた。今後,穴あき基板を用いたBi-2212成膜を行う予定である。
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