研究概要 |
現在のユビキタス社会を支えるULSI半導体の基本素子となるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)では、半導体と絶縁膜との界面で生じる電荷移動が、絶縁膜や界面での欠陥生成に関与する。本研究期間では、負バイアス温度不安定性NBTI(Negative Bias Temperature Instability)を対象に研究を進めた。これは、MOSゲート絶縁膜の重要な信頼性指標の一つであり、界面準位と固定電荷が生成するが、機構に関しては,界面での欠陥を終端していた水素原子が,ストレス印加により界面より脱離する事で起こると考えられている。報告者は、ホールトラップしたSi/SiO_2界面から酸化膜中にホールが移動したあと、界面P_bセンタを終端している水素原子がSiO_2中に移動する水素原子移動モデルを提案し、界面への窒素導入によるNBTI助長効果などが反応熱の変化から説明できる事を報告してきたが、その遷移状態に関する計算は行ってこなかった。 本年度は、そのポテンシャル面を第一原理計算により解析した。P_bセンタモデルとして(H_3Si)_3SiH、SiO_2モデルとしてO(Si(OH)_3)_2を用い、P_bセンタSiとOとの距離が7A(4A)の場合について水素原子移動のポテンシャル面を解析した。Si-O間の距離が7A(4A)の場合、活性化エネルギ1.6eV(1.5eV)、反応熱-0.8eV(-0.4eV)の発熱反応である結果を得た。また、NBTIでは水素原子が移動するのではなく、プロトンが移動するとの機構が提唱されているが、Si_34O_35H_43の大規模界面クラスタモデルを用い、プロトン移動、水素原子移動の双方のエネルギを非制限分子軌道計算で計算、水素原子として移動するほうが安定であることを確定する事ができた。
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