半導体の基本素子となるMOSFET(Metal Oxide Seemiconductor Field Effect Tran-sistor)では、半導体と絶縁膜との界面で生じる電荷移動が、絶縁膜や界面での欠陥生成に関与する。前年度は絶縁膜中に形成される、各種欠陥構造について、その電子状態とエネルギ準位について詳細な解析を行った。本年度は、ゲート絶縁膜中に形成された欠陥構造の物性、特に、現在利用が進んでいるハフニウム酸化物(HfO_2)について、その荷電安定性の評価と、欠陥構造にAl、La、Mgなどの元素添加を行った場合のゲート絶縁膜としての信頼性の変化を、計算物理の手法であるバンド計算手法、具体的には、VASP(Vienna Ab-initio Simulation Package)プログラムを用いて解析を行った。単斜、立方の結晶相に加え、アモルファス状態での解析を行った。この結果、先ず、HfO_2中の点欠陥に関しては、酸素欠損の生成エネルギが、Hf欠損の生成エネルギに比べ低くなる事、即ち酸素欠損に比べ、Hf欠損が生成しにくい事が分かった。次に、元素添加に必要となる生成エネルギでは、Alが一番低くなり、HfO_2中への元素添加ではAl添加により最も安定な状とになる事がわかった。また、La添加により、各結晶相での酸素欠損生成エネルギが高くなる事、Al添加によりcubic相では酸素欠損生成エネルギが高くなる事が分かり、La、Al添加により酸素欠損の生成が抑制されることが示唆された。さらに、単斜HfO_2の欠陥準位解析から、酸素欠損およびその欠損位置への元素添加により、絶縁膜としての特性劣化につながる深い準位の形成が見られる事が分かった。
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