テラヘルツ分光エリプソメトリーの装置の光源であるテラヘルツ信号発生装置は、励起光源として半導体レーザーを適用して、連続波化することに成功し、30MHz以下の周波数分解能実現に成功した。これは高精度膜厚計への適用を考慮すると、大きな進歩であり、もともとの計画では、測定できる対象膜厚を数μmから1cm程度としていたが、これを更に"数μmから3m程度"と上方修正することができる。従来の、可視光あるいは赤外光によるエリプソメトリー膜厚計では不可能であった、格段に厚い領域まで計測することができる見通しである。有機分子製品の膜厚計測だけではなく、例えば建築物壁材の厚み、あるいは不可視となっている2枚の壁材間の距離をも計測することができると考えられる。更に都合の良いことに、励起光源は小型軽量化され、レーザー光も、光ファイバーで供給されることから、計測現場での利用も容易であり、新たな用途を切り拓くものであると考えられる。 昨年度に引き続き、有機分子の結晶成長を行って反射分光測定を適用し、指紋スペクトルとして利用可能な反射スペクトルデータベースを作成している。GaP結晶を導波路構造として、励起光の偏光方向を操作することにより、出力テラヘルツ波の楕円偏光操作に成功しているが、計画当初より課題としていた、テラヘルツ位相変調の方法は、現時点でも解決されておらず、分光エリプソメトリーは実現できていない。これによって複素屈折率の取得に至っていないので、次年度はこの手法創出を急ぎたい。
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