本研究では、熱力学的考察に基づき界面形成プロセスを制御することで、界面の一原子層(界面終端原子)の種類を自在に制御した系を実験的に作製し、そのショットキーバリア高さを測定して、界面終端原子の種類とショットキーバリア高さとを関連付け、ショットキーバリアの高い系やオーミックコンタクトの系を自在に設計する指針を得ることを目的としている。本年度は下記の研究を行った。 1)界面終端原子の制御のための界面形成プロセスの開発 アルミナ-銅界面において酸素原子終端の界面の形成を目指し、超高真空中で清浄なCu(111)表面を作製し、様々な試料温度で酸素を導入しながらAlを蒸着してCu(111)上にアルミナ膜を成長させた。その結果、600℃以上で、エピタキシャルアルミナ膜を成長させることに成功した。また、予想通りに、界面が酸素原子により愁嘆されていることを、XPSによるAl 2pスペクトル解析により明らかにした。 2)界面のショットキーバリア高さ、界面電荷層の電子分光的計測 (1)で形成した酸素原子終端をもつ試料のショットキーバリア高さそ光電子分光法により計測した。その結果、ショットキーバリア高さは、Cu-9Al合金の酸化により得たアルミ原子終端の場合よりもわずかに小さいのみで、大きな違いはなかった。Cu(111)の仕事関数は5.04eVであるのに対し、用いた合金Cu-9Al(111)の仕事関数は4.39eVとかなり小さく、この仕事関数の違いが、界面終端原子の違いによるショットキーバリア高さの違いが少ない原因と考えられる。
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