サファイアC面基板の上に成長させたAlGaN/GaNに対してAlGaN層の上に径500nmのダイヤモンド粒子を分散させてその上から数keVのArビームを全体に均一に照射してエッチングすることでロッド状の試料を作製した。そのロッド先端の非晶質化した残留ダイヤモンド粒子に、本研究で開発した3端子電圧導入機構を備えた試料ホルダーを用いてPt探針を接触させ、+50Vおよび-50Vのバイアス電圧を印加し、AlGaN/GaNにおけるポテンシャル変化を電子線ホログラフィーによって観察することができた。厚さの不均一さの効果を除去するため、バイアス印加時の位相像をバイアス0Vの位相像で割り算し、オリジナルのポテンシャルで規格化したバイアス印加時のポテンシャル変化を捉えることができた。その結果、バイアス印加は主にAlGaN内におけるポテンシャル勾配を形成すること、そのポテンシャル勾配は均一ではなく湾曲していること、AlGaN/GaN界面において二次元電子ガス(2DEG)の変化によるものと思われる局所的なポテンシャルの増減が生じること、がわかった。以上のように、本研究において、バイアス印加などの実際にデバイスを動作させる様々な条件をTEM内に再現し、その時のポテンシャルの変化を電子線ホログラフィーによって捉えることができることが実証された。こうして、外部からの電界操作による最適な特性を実現するデバイス開発のための新しい評価技術を確立することができた。
|