平成21年度では、はじめに昨年度の波長走査性能を確認した面発光型半導体レーザ(VCSEL)を2個使用し、それぞれの発振周波数を逆方向に同時走査させる機能を持つ電流駆動回路を設計・製作した。光路揺らぎの影響を除去して長さを安定に測定するにはそれぞれの周波数走査量を合致させる必要があり、昨年度製作したブロックゲージによる基準干渉計を使用した。すなわち本干渉計から出力される干渉縞位相のシフト量が一致するように各電流走査量を調節する。この状態でピエゾ素子を光路中に組み込んだ干渉計(被験長さ10mmを含む)からの2つの干渉縞位相シフト量の平均演算を行ったところ、ピエゾ素子で与えた光路揺らぎの影響が大幅に低減し、安定に長さを測定できることが実証された。これと同時に、両位相シフト量間の差分を取ったところピエゾ素子による光路変動の時間波形が検出され、本研究の目的の一つである物体変形量の検出が基本的には可能であることがわかった。 次に手動で行っていた周波数走査幅調節を自動制御で行うことを目的に、位相同期ループ(PLL)技術を応用した電流自動調整回路(1回路)を設計・製作した。本回路の動作試験を行ったところ、基準干渉計の干渉縞位相が外部基準クロックに位相同期されており、良好に動作していることが確認された。本システムによれば干渉縞位相の勾配が時間的に一定になるため、最小自乗フィッティングで求めた勾配値から測定長さを精密に決定できる。この方法を拡張して原子吸収線マーカー波長における干渉次数を推定することにより、測長精度をナノメートルレベルにまで引き上げることが可能となった。この成果については2件の学会講演会にて発表講演を行っている。
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