本研究の目的は、「微小ディスクサブバンド間遷移ラマンレーザー」の理論を発展させ、半定量的な解析をベースにして、新規中間赤外波長域の光ポンプ量子構造半導体レーザーの設計を行うことにある。このレーザーの特性制御のアイディアは、円柱状微小ディスク共振器の電磁場モード(ウィスパリング・ギャラリーモード)の形状(半径、厚み)依存性とレーザー発振周波数の印加電場依存性の二つをうまく同調共鳴させることにある。これにより、レーザーの波長変化、高効率化を図ることが期待される。今年度は、(1)レーザー動作の時間発展と電場効果の数値解析の実施、(2)解析的手法による円柱状微小ディスク構造における電磁場パターンの研を行った。とくに(1)の研究成果を第33回IRMMW-THz国際会議において報告した。レーザー動作の時間発展についての具体的内容として、サブバンド間遷移誘導ラマン散乱と縦光学フォノンのサブバンド間緩和率を加味したレーザーレート方程式を構築し、サブバンド間のエネルギー移送と連立させて、ストークスフォトン数、各サブバンドの電子占有数、温度の時間発展を導いた。数値計算は2重結合GaAs/AlGaAs量子井戸について実施した。100-200psの時間域にレージングに対応するストークスフォトン数の急激な増加と1ns以降の定常動作に導く飽和を見出した。また、これに同期する第一励起状態の電子温度の大きな低下と引く続く上昇を確認できた。電場特性については、ゼロ電場の結果と比べて顕著なラマン利得の増強効果を見出した。その結果、電場をゼロから負方向へ40kV/cmほど掃引することで、発振波長を数μm変動させることができることを明らかにした。
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