研究概要 |
従来までレーザー媒質としてYAGなどの結晶群に比べガラス母材は,耐熱性の低さから,高い平均パワーレーザー装置には適応できなかった。結晶化ガラスは,近年のガラスの部分結晶化技術の開発と急速な進展によって,熱伝度率の大幅な向上と,膨張係数の制御が可能となり,非常に高い耐熱性を有するようになった。この部分結晶化ガラス技術のレーザー媒質への適用が可能となるなら,YAGの10倍以上の非常に高い平均パワーを得ることが期待できる。結晶化によって更なる固体レーザーの高出力化や高機能化が期待できる。 本研究は,部分結晶化ガラスのレーザーイオンドープ技術の確立と高効率発光の改善の見通しの可能性を追求することである。結晶化ガラスを用いた高平均パワー用レーザー材料の基礎的研究として,平成20年度は交付申請書研究実施計画に従い、シリカ系ガラスのNdドープのレーザー静特性評価を行った。 部分結晶化ガラスセラミックス(クリアセラム:(株)オハラ)に,レーザーイオンとしてNd^<3+>をドープし,その熱ショック定数と発光特性について評価を行った。ガラスは,熱処理によって部分的に結晶化し,結晶相は,負の熱膨張率,ガラス相は,正の熱膨張率を示す。そのため,結晶成長を制御することで,極めて低い熱膨張率を実現できる。使用したガラスセラミックスの熱ショック定数は,ノンドープ状態で840[℃]で結晶成長させた場合11,013[W/m],860[℃]で結晶成長させた場合5,507[W/m]が求まった。これは,YAG結晶の7〜10倍以上であり,レーザーの高出力化に高い期待ができる媒質であることがわかった。誘導放出断面積は,分光データよりFuchtbauer-Ladenburg法により導出したもので2.1×1^<0-20>[cm^2]となった。今後,Nd添加条件と熱処理条件の最適化を行い発光特性の改善を図る予定であり、また平成21年度は当初予定通り,昨年度分シリカ系ガラスに加え,リン酸系ガラスのNdドープのレーザー静特性評価を行う予定である。
|