研究概要 |
従来までレーザー媒質としてYAGなどの結晶群に比ベガラス母材は,耐熱性の低さから,高い平均パワーレーザー装置には適応できなかった。結晶化ガラスは,近年のガラスの部分結晶化技術の開発と急速な進展によって,熱伝度率の大幅な向上と,膨張係数の制御が可能となり,非常に高い耐熱性を有するようになった。この部分結晶化ガラス技術のレーザー媒質への適用が可能となるなら,YAGの10倍以上の非常に高い平均パワーを得ることが期待できる。結晶化によって更なる固体レーザーの高出力化や高機能化が期待できる。 本研究は,部分結晶化ガラスのレーザーイオンドープ技術の確立と高効率発光の改善の見通しの可能性を追求することである。結晶化ガラスを用いた高平均パワー用レーザー材料の基礎的研究として,平成21年度は交付申請書研究実施計画に従い,部分結晶化ガラスセラミックスの組成比や焼結温度の異なるサンプルを試作し,その発光特性の評価を行った。 部分結晶化ガラスセラミックス(クリアセラム:(株)オハラ)に,レーザーイオンとしてNd^<3+>をドープし,その発光特性と熱ショック定数について評価を行った。組成比を変化してガラスとして製造できたサンプルの内,蛍光線幅が基準としたサンプルに対し約25%狭くなり,誘導放出断面積が約2-3倍増加する傾向が得られた。焼結温度の上昇に伴い蛍光スペクトルは35%~85%ほど強度が減少することがわかった。耐熱性は他のガラス材料と比較して約100倍の優位性がみられた。今後も引き続き,Nd添加条件と熱処理条件の最適化を行い発光特性の改善を図る予定であり,また平成22年度は当初予定通り,昨年度までのレーザー静特性評価に加え,Ndドープ結晶化ガラスのレーザー発振特性評価を行い,本研究の総括・まとめを行う予定である。
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